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【プロ野球】巨人軍11連敗記念・長嶋さんCMは最下位を予言していた!?

プロ野球ではジャイアンツが42年ぶりの球団ワーストに並ぶ11連敗。実は昨年の春先にはこの事態を予言するかのようなCMが放映されていたのでした。ジャイアンツはどこへ向かうのか。いや、どこへ向かうべきなのか。いろいろと考えてみました。

 

 

ジャイアンツ11連敗の理由

6月6日、読売ジャイアンツ西武ライオンズに敗れ11連敗となりました。これは球団ワーストタイ記録。実に42年ぶりのことだそうです。

 

評論家の優勝予想ではセ・リーグで圧倒的な人気を集めていたので異常事態と言えるかもしれません。もともと批評のタネになりやすいジャイアンツですが、連敗中は作戦から編成、起用法、技術論から精神論までさまざまな観点から批判を集め、ついには「育成の失敗」というそもそも論まで登場するに至りました。それを言ったらおしまい、というか、仕方無いわけです。

 

私は開幕直前にBクラス予想をしていますので、特に驚くようなことはありません。どちらかというと、ヤクルトとベイスターズが不調な分、助かっていたんじゃないかと思うくらいです。

 

まずは、ジャイアンツが勝てない理由をおさらいしてみたいと思います。

 

阿部頼み打線

開幕直後は4番に座った阿部が絶好調でした。しかし、当初から「坂本出塁、阿部タイムリー」以外に得点パターンが無いんじゃないか、というくらい阿部の負担が大きかったのでした。そして、阿部の調子が落ちるにしたがって貧打が顕在化してきました。

 

2番打者軽視

得点力不足に拍車をかけたのが1、2番の不振です。そもそも、中井、立岡という格の落ちる選手でスタートしたのが間違いです。特に2番打者はチームの色を決定付ける非常に重要な打順です。チームでもっとも優れた打者を置くべきです。

 

ベテランの不振と育たない若手

長野、村田、内海、大竹など実績のある選手が不調です。これは、ある程度予想ができました。そして、彼らに代わる若い世代の選手がほとんど育ってきていません。これは、今に始まったことではありません。

 

これらの理由から11連敗もそれほど不思議なことではありません。反対に優勝を狙うチームとしては疑問符が付きます。調子のよい悪いではなく、地力のところに不安があります。

 

長嶋さんCMは予言していた!? 

昨年の2月頃、あるコマーシャルが流れました。日本テレビの野球中継のコマーシャルです。監督就任1年目の若き長嶋茂雄氏と就任したばかりの高橋由伸監督、二人が監督としてノックバットを振るう様子を合成して繋ぎ合わせた映像が流れます。

 

二人には共通点があります。現役引退直後に監督に就任したこと、そして、監督としては非常に若い「青年監督」であることです。つまり、ジャイアンツの伝説的人物である長嶋さんと高橋新監督を重ね合わせることで、新生ジャイアンツへの期待を煽ろうという手法です。

 

実は、二人にはもう一つ共通点がありました。それは、引き継いだチームがボロボロだということでした。

 

長嶋監督の前任者はV9で有名な川上監督です。9年連続で日本一になるということは尋常なことではありません。実はV9の後半は選手が高齢化し、戦力の衰えが指摘をされていました。セ・リーグの優勝争いも混戦で、日本シリーズでは「今年こそ阪急が勝つ」と言われ続けていました。しかし、川上監督は緻密で厳しい采配で選手の力を絞り出し、前人未踏のV9を達成したのでした。さすがの川上監督も10連覇には失敗。長嶋監督は、すべてをやり尽くし絞りカスのようになった選手たちを引き継いだのでした。

 

高橋監督の前任は原監督。非情采配と言われた手段を選ばない采配で、高齢化したチームにムチを振るい続けたものの、ついには優勝を果たせなくなって退任しています。

 

そして、長嶋監督の監督1年目は最下位に終わっています。42年前、前回の11連敗の年です。しかし、それから長嶋監督は地獄と形容されるキャンプで若い選手を鍛え上げ、その後のジャイアンツの黄金時代の基礎を築いていきます。

 

これらの事実から、このCMは「高橋新監督の最下位」を予言しているのではないか、と推測されます。もしかすると、ジャイアンツか親会社がグループ企業の日テレを使って、「成績が悪くても許してね。長嶋さんだって悪かったからね」というメッセージをサブリミナルで刷り込もうとしているのではないか、と。

 

しかし、結果は2位でした。

 

タイガースはV字回復を達成した 

今季、金本監督率いるタイガースが好調です。広島カープと首位を争い、優勝を狙える位置にいます。原因としては、「本当の大物フリーエージェント」糸井の加入などもありますが、やはり、若い選手が中心選手として活躍していることが大きいでしょう。そして、鳥谷、藤川といった昔からお馴染みのベテランは、より限定的な役割しか与えられていないものの、新しい仕事でベテランの味を発揮してチームを支えています。

 

背景には、Bクラスに低迷した昨シーズンの経験があるでしょう。「超変革」を掲げて若手の積極起用を行った金本監督ですが、思うように結果は出ず、あらゆる階層のプロ野球関係者からボロカスに批判を浴びました。とはいえ、今季の若手の活躍とチームの躍進は昨年の成績の犠牲の上にあるのは間違いありません。

 

一度落ちて、また上がる。いわゆるV字回復です。

 

若手への切り替えは簡単ではありません。そのまま、低迷から抜け出せなくなることもあります。とはいえ、いつかはやらなければならないことですし、後回しにすると取り返しのつかないことになります。

 

勝利と育成の両立」とは言いますが、軸足勝利に置けば必ず育成はおざなりにされます。

 

新監督で迎えた昨年は金本タイガースより高橋ジャイアンツの方がよい成績を収めましたが、今季は立場が逆転しています。

 

 最下位ノススメ

長嶋監督も金本監督も同じメッセージを発しています。

 

ジャイアンツよ、最下位になれ」

 

ということです。一度、どん底に落ちて、そこから這い上がるのです。

 

現在のチームは、状態を改善すればもう少し勝てるかもしれませんが、優勝するのは厳しいでしょう。万が一、優勝できたとしても、来年や再来年は今年よりもどんどん力が衰えていくであろうことは目に見えています。

 

そもそも、現在のチームは、前任の監督が目先の勝利のために将来を犠牲にした、その「将来」の姿なのですから、目先の勝利を目指す力はほとんど残っていませんし、そのことで未来をより深刻にしてしまいます。

 

別のたとえを使えば、「経済最優先」と言って石油や石炭を使いまくっていると、地球が温暖化して取り返しのつかない事態になるようなものです。

 

「3年後から5年続けて優勝するチームを作ろう」と思ったら、取るべき道はひとつです。3年後にひとつのピークを迎えるチームから逆算して、チームを作り直すことです。ジャイアンツの資金力と組織力があれば、不可能な目標ではありません。

 

目先の勝利を目指しても11連敗するのです。負けることを恐れる必要はありません。しかも、この11連敗は育成の役に立たない犬死にの負けです。

 

これから、チームはたくさん負けるでしょう。しかし、その負けは、育てるための負けでなければいけません。