汽水域 Ki-sui-iki

ローカルとオルタナティブ 浸透し混じり合うところに生まれる生態系

ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書

メリル・ストリープのための映画。

新聞創業家に生まれ、父や夫の死ではからずも社長になってしまったお嬢様が重大な決断をくだすまでの物語。彼女が弱い女性だからこそ、その繊細な心の動きを表現するのは難しい。

 

そして、トム・ハンクスは相変わらずの粗暴なトム・ハンクスで期待を裏切らない。25セントのレモネードを50セントで売ったのも、巨悪を倒すことに劣らずよい仕事だ。

 

ニクソン政権時代を描いた作品の背景は、日本の政治状況ともよく一致する。この映画の封切りに合わせたPRではないか、というほどに、よく。ハンクス演じるベンは、

「朕は国家なり」

という言葉を引用して、政権を批判する。メディアのあり方の問題ではなく、国家とは何者であるか、という根源的な問いかけだ。

 

そして、この物語には悪者が登場しない。凶悪なニクソンを除いては。多くの人は、ストリープ演じるキャサリンと彼女が家族から受け継いだ新聞社を守るために行動する。告発の対象となるマクナマラ前長官ですら、そうだ。

しかし、そのことがスクープ掲載に向けて大きな妨げになる。家族を思い、友を思い、皆の平穏な暮らしを願う心が、巨悪をのさばらせるという矛盾だ。そうした、家族を拡大した共同体が持つ臆病さこそが、最大の敵なのだ。

 

本当の友というのは、あなたが彼の提案とは反対の決断をしたときに、その決断を支えるために力を尽くしてくれる人のことだ。だから、安心して共同体の臆病さを断ち切って決断をしなさい。メリル・ストリープのように。

【おんな城主直虎】(44)母という檻

第44回「井伊谷のばら」の元ネタは、母子のつながりを描くという意味では「ベルサイユのばら」ではなく「パーマネント野ばら」ではないか。

 

いよいよ初陣を迎えた万千代。家康暗殺の企てを見破り未然に防ぎ、1万石の知行を与えられることになる。井伊谷では祐椿尼が病で倒れ、ゆかりの人々が見舞いに訪れる。祐椿尼の計らいで対面が実現したおとわと万千代だが、二人の意見は平行線で物別れに終わる。そんな中、祐椿尼が息を引き取る。

 

続きを読む

【おんな城主直虎】(43)おとわ、竜宮小僧になる

第43回「恩賞の彼方に」では、おとわと万千代の目指す道のちがいは二人の行動に明確に表われる。

材木の乱伐によって山崩れが起きた井伊谷。おとわは近藤に進言して植林を行うことにする。一方、小姓に昇進した万千代は家臣たちの手柄の整理をきっかけに、家康の使いとして岡崎に赴き論功行賞の調整を見事にまとめる。数年が経ち、井伊谷の長老・甚兵衛が世を去るが、おとわたちと植えた木は確かに成長をしていた。

 

続きを読む

『関係人口をつくる』(田中輝美)

ローカルジャーナリストの田中輝美さんが自らも関わった島根県の施策『しまコトアカデミー』を例に、定住人口でも交流人口でもない新しい切り口、関係人口の地域振興における重要性について書いた本です。

 

続きを読む

【おんな城主直虎】(42)茶碗・鉄砲・柵・やおい

第42回「長篠に立てる柵」では、歴史的大事件の裏側のできごとが描かれる。

家康は信長の援軍を得て長篠で武田軍を迎え討つ。大量の鉄砲を用いた新戦術で織田・徳川連合軍は大勝利を飾る。六左右衞門は材木調達の功を認められ、信長から高価過ぎる茶碗を拝領。井伊の者の無事に安堵し、長篠に赴いて戦没者を悼むおとわ。留守居の万千代は真面目に武具を修理するが、手柄を横取りされてしまう。浜松に戻った家康は万千代を寝所に招き「そういうことになってしまおうか」と言うのだが。

 

続きを読む