汽水域 Ki-sui-iki

ローカルとオルタナティブ 浸透し混じり合うところに生まれる生態系

【NBA】2018地区決勝第2戦・スタイルを貫いたロケッツと悪い癖が出たウォリアーズ

西地区のカンファレンス・ファイナルは、ウォリアーズが敵地で先勝したものの続く第2戦をロケッツが大差で制して1勝1敗。現地のスポーツ専門チャンネルESPNは、「ロケッツは批判に動じず、自分たちのプランを貫いた」(Rockets defy critics and stick to the plan in Game 2 win)と評している。

 

アイソレーションからの攻撃を貫くロケッツ

ロケッツの先発PFであるPJタッカーは、127-105で圧勝した第2戦の後、

「今日はロケッツらしい試合ができた。緒戦は誰がプレイしているか分からなかったが」

とコメントしている。

 

敗れた第1戦では、アイソレーションからの1対1が多すぎると批判されたロケッツ。彼らは第2戦も「やり方を変えたわけではない」と言うが、パスがよく回るようになり、シューティングも改善した。この試合でロケッツはアシストパスから12本のオープンな3点シュートを放ち、そのうち6本を決めた。第1戦では同じ状況を5回作って2回決めたのみだった。

 

ラッキングシステムにより試合のデータ解析を行うセカンドスペクトラム社によれば、ロケッツのアイソレーションからの攻撃は、第1戦の45から第2戦の46へと減ってないどころか増えている。確かに彼らはやり方を変えたわけではない。ただし、内容はより「公平」になった。ジェイムス・ハーデンのアイソレーションは26から16へ減り、クリス・ポールは10回から16回に増えている。

歴代最高のポイントガードのひとりであるポールがプレイメイクする機会が増えたことにより、サポーティング・キャストがより多く攻撃に参加するようになった。この日、6本のスリーを沈め、ハーデンと並ぶ27得点でチームをリードしたエリック・ゴードンにトレバー・アリーザとタッカーを加えた3人が70%のシュート確率で68点をあげている。第1戦では38%で24点だったので大きな違いだ。

ハーデンは24本シュートを放って9本成功と決して調子がいいわけではなかったが、それでもチームは大勝を収めた。

 

ロケッツのマイク・ダントーニ監督は言う。

「ただ自分たちのやるべきことをやっただけだ。よりハードにプレイした。相手は我々をフィジカルだと感じたに違いない。第1戦ではそこまでの強度を持って戦ってなかった。選手たちは敗戦から学び、立ち直って、自分たちの仕事をした」

 

ウォリアーズの不安要素は カリーの不調

ウォリアーズの問題もよく似ている。シーズンを通して、彼らの最大の敵は自分たち自身だった。彼らはすぐに相手を見下して、緊張感の無いだらしない戦い方をしてしまう。

レギュラーシーズンのウォリアーズのターンオーバーは1試合平均で15.4。リーグ26位と下から数えた方が早い。勝利した第1戦では9個だったターンオーバーは、敗れた第2戦では第1クォーターだけで7つ、前半終了時で11と増加。後半は気を引き締めて4つまで減らしたが、時すでに遅し。ゲームの流れは決まってしまっていた。

監督のスティーブ・カーは言う。

「自業自得だ。ロケッツに尻を蹴り上げられた」

 

唯一、奮闘したのは、22本中13本のシュートを決め38点をあげたケビン・デュラントだ。チームが波に乗れず誰もシュートを決められないときは、いつも彼がチームを引っ張る。しかし、アシストはゼロ。ロケッツがチームを分断し彼を孤立に追い込んでいたことの証左だ。

 

ステフィン・カリーは16点で続いた。しかし、このシリーズ2試合で3点シュートの成功が13本中2本と不調だ。本調子なら1試合で13本放ち、そのうち半分を決めていてもおかしくない。出場時間中の得失点差を表わすPMRがマイナス20というのは今季最悪。これほど悪いのは、同じくひざの靱帯を痛めていた2016年ファイナル以来だ。

カリーは、ひざの状態はパフォーマンスに影響無いと言う。しかし、第1戦の途中でどこかをひねったことを認めているし、スティーブ・カーは冗談交じりで「回復度合いは13.7%」と言っている。

ディフェンスでも厳しい状態に置かれている。ロケッツはカリーをアイソレーション・オフェンスのターゲットにしており、この日は彼を相手に11回の1対1を仕掛けてきた。2番目に多いのが、経験の浅いビッグマンのケヴォン・ルーニーの6回だから、いかに狙われているかが分かる。

カリーは言う。

「フラストレーションのたまる試合だった。しかし、もっと上手くシュートできるし、守ることもできる。攻守ともに他の選手を巻き込んでチームでプレイすれば、いい形が作れる。家を焼かれたようなパニック状態にはなってない。チームは、すぐにいい状態になるはずだ」

 

負けるときの悪い癖が出たウォリアーズは、ロケッツが第2戦で見せたように、次の試合で調子を取り戻すことができるだろうか。カギとなるのは攻守ともに不調のステフィン・カリーだ。彼が第3戦で輝きを取り戻せばシリーズはウォリアーズに傾くが、できないようであればロケッツが優勢を拡大していくだろう。

 

第3戦は現地5月20日(日)、場所をウォリアーズの本拠地であるカリフォルニア州オークランド、オラクルアリーナに移して行われる。

(英文記事をもとに要約・加筆をしています)