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【プロ野球開幕】今年も巨人が優勝できない5つの理由!球春吉例・順位予想をやってみた

3/31にNPB(日本プロ野球)の2017シーズンが開幕します。この時期の風物詩でもあり、専門家も素人もファンなら無責任に楽しめるプロ野球順位予想をやってみました。そして、大補強で話題のあのチームが優勝できない理由もあげてみました。

 

 

パ・リーグ:巨大戦力のホークスがリベンジ

昨年まさかのV逸となったホークスが中心となるのは間違いない。ファイターズは昨季後半の勢いが実力なのか調子次第なのかで評価が分かれそう。2位以下は混戦になりそうで、どこか浮上するか楽しみ。

 

優勝:ホークス

巨大戦力。2年連続V逸はさすがにありえない。このチームで勝てないようなら監督に問題がある。不安があるとすれば、首脳不信による空中分解のみ。

2位:マリーンズ

戦力的には不安があるものの伊東マジックに期待する。

3位:ライオンズ

魅力的な選手はいるものの長らく低迷。そろそろ浮上していい。投打のかみ合わせと試合運び次第でAクラスの実力はある。

4位:ファイターズ

強豪だが連覇が無い。選手の新陳代謝を図るために浮上と下降が激しいチーム。実力を発揮すれば優勝を争えるが、選手層は厚くない。あえて5割程度に転落すると予想。

5位:イーグルス

岸の加入で一気に浮上するほど甘くない。今季はまだ実力を蓄えるシーズン。

6位:バッファローズ

若手の好選手が出てきたが、まだ再建期。もうしばらくは負けながら学ぶことになりそう。

 

セ・リーグ:安定のカープに勢いのあるベイスターズが挑む

ここ数年大混戦だったが、上向きのチームと再建に向かうチームで明暗が分かれそう。巨人、阪神は再建期に突入したと潔く認めた方がよい。小さなフランチャイズに好チームが多いのはおもしろいが、選手層に不安があるのが不確定要素。

 

優勝:カープ

優勝を経験した安定感。若いチームで伸びしろもある。マエケンの穴が埋まるなら、黒田の穴も埋まる。ただし、小さいフランチャイズのチームは連覇が厳しい。

2位:ベイスターズ

若いチームで順調に成長すればカープを上回ることも十分可能。

3位:スワローズ

昨季は投手陣崩壊とけが人続出で低迷したが、健康ならばクライマックス・シリーズを争える。

4位:ジャイアン

主力の高齢化が深刻。ベテランに昨年並みの活躍を期待することは難しいのではないか。補強戦力も蓋を開けてみるまでどっちに出るか分からない。

5位:ドラゴンズ

低迷はフロントも含めた内紛が原因。世代交代は完了しており、そろそろ上昇曲線に乗ってもよい頃。

6位:タイガース

若手に切り替えて一気に浮上できるほど甘くない。今季は下位で経験を積むシーズン。

 

ジャイアンツが優勝できない理由

球界の盟主ジャイアンツは3年連続のV逸は許されないとばかりに大補強を敢行。これを好感して、評論家の順位予想は軒並み「巨人優勝」が並んでいます。しかし、本当に今年のジャイアンツは強いのでしょうか。

 

昨季の実力は3位以下

昨季2位で、もともと伝統と資金力を持つジャイアンツが優勝に向けた大補強をしたのだから、順位が上がって優勝と考えるのが妥当と思えるかもしれません。しかし、昨季の成績は71勝69敗ときわどく3位が妥当な成績。交流戦で他チームが大きく負け越したために2位になっていますが、優勝に向けて上積みすべきものは意外と大きいと考えた方がよいでしょう。

 

得失点差マイナスは下降のサイン

チーム力を測る上でもっとも基本的な指標は総得点と総失点です。傾向としては、得失点のプラスが大きいほど勝ちが増え、マイナスが大きいと負けが増えます。もちろん、僅差の試合で勝負強さを発揮すれば、得失点差よりよい成績を収めることができます。

 

しかし、「チーム力の基礎体力」として得失点のプラスが大きいほどよいに決まっています。勝負強さはプラスアルファと考えた方がよいでしょう。

 

昨季のジャイアンツの得点は519、失点は543で得失点差は24のマイナスになります。一方、勝敗はわずかにプラス。勝負強さで少し勝ち星を拾っていると考えることができます。

 

しかし、これはあまりよいサインではありません。勝負強さを発揮して効率的に勝利を稼ぐことができるのはベテランが多いチームの特徴です。つまり、体力の衰えを技術と経験で補っているようなもの。チームが下り坂に差し掛かっていることを示唆しています。

 

一昨季のタイガースがまさに同じ状況でした。得失点は大きくマイナスだったのにきわどく3位に滑り込みました。しかし、昨季はBクラスに転落しています。

 

主力に昨季同様の活躍は求められない

実は、個人成績を見れば昨季のジャイアンツはそれほど悪くありませんでした。

 

打線では首位打者を獲得した坂本をはじめ、長野、村田も前年より成績アップ。中でも村田は移籍後最高ともいえる成績でした。開幕に間に合わなかった阿部も復帰後はまずまずの成績。ダメ外国人と言われたギャレットも下位打線としては十分な成績でした。

 

一方、投手を見ても菅野に加え田口が台頭。また、開幕に間に合わなかったマイコラス、内海、大竹も復帰後はローテーション投手として満足できる働きを見せました。

 

欲をいえばキリが無いものの、主力のほとんどが一定の活躍をしています。坂本、菅野はともかくとして、ベテラン選手全員に昨季と同等以上の活躍を求めるのは難しいでしょう。むしろ、成績は落ちると計算した方が妥当かもしれません。

 

2番打者軽視が敗因か?

こうして見ると昨季V逸の理由がよく分からなくなります。打線もそれほど悪くない。先発投手の頭数は揃っている。リリーフ投手もシーズン通じてよく働いた。

 

アラを探せばキリがないものの、それを言ったら優勝したカープだって完璧ではありません。比較してみれば、外国人の貢献度、リリーフの安定感などではジャイアンツも遜色ないですし、先発投手の人数でいえばむしろ勝っているともいえます。

 

昨季の敗因と補強ポイントは何となくもやっとしており、そのため、戦力の大補強をしても決定的に解決した印象にはなりません。

 

何か見落としがあるのではないでしょうか。そこで、V逸の決定的な原因は「2番打者軽視による得点力不足」ではないか、と仮説を立ててみました。

 

ジャイアンツの投手力はそれほど悪くありません。総失点はカープ、タイガースに次ぐ3位ですが、差は50点ほど。一方、総得点は1位のカープに160 点以上離されて4位。最下位のドラゴンズとの差はわずか19点しかありません。昔から「優勝のカギは安定した投手力」といわれてきましたが、最近は総失点が少ないチームが順位がよいとは限らなくなってきました。むしろ、総得点の方が順位との相関性が高くみられるシーズンもあります。

 

投手はいいのに打線が点を取れない。打線も個々をみれば成績は悪くないのに、得点につながらない。これは、2番打者が活躍できないため、効率的に得点をできていないのではないか、という仮説です。

 

時代によって打線の組み方は変わります。かつては、バントや進塁打など小技のできる2番打者が主流でしたが、現在ではより大量得点を狙って打率、出塁率の高い打者を置く方にシフトしてきています。長打を打てればなおよい、とも考えられてきています。

 

優勝したカープには、「陰のMVP」ともいわれた菊池がいます。小技もできますが、自らの打撃で塁に出ることもでき、本塁打も2桁とパンチ力もあります。新旧の2番打者に求められる能力を併せ持った選手といえるでしょう。

 

そして、躍進をみせたベイスターズはシーズン終盤、梶谷を2番に固定。小技は無いものの天才的打撃センスで安打を量産する3番打者タイプの選手です。この選手を2番に置くのが最新のトレンドを踏まえたラミレス流といえるでしょう。

 

それに対して、ジャイアンツは最後まで2番打者を固定できませんでした。むしろ、この打順を軽視して実力の劣る選手を起用しているようにも見えました。

 

古典的な2番打者は打率の低い選手が多いですが、それはあくまでチーム・バッティングで打率を犠牲にしているから。進塁打などで安打以上の価値を生み出していると考えるべきです。決して実力の劣る選手の打順というわけではありません。

 

2番打者は非常に重要な打順になりつつあります。現在のジャイアンツで最強の打者である坂本を2番に固定して、そこから他の打順を決めていく、という考え方も最新のトレンドに照らせば決しておかしなことではないと思います。

 

再建期に入る勇気が必要

対症療法的に戦力アップを図ることはいくらでもできますが、抜本的にはやはり若返りが必要でしょう。現在の主力もまだまだ頑張れるかもしれませんが、1年ごとに歳を取っていくのは事実。数年先を見据えて高橋監督の下で黄金時代を築こうと思えば、現在のメンバーを主軸と考えることは難しくなります。

 

そもそも、現在の主力メンバーは原監督時代に活躍した選手がほとんどです。しかも、原政権の末期には「非情采配」で選手の力を絞り出し、絞り切っても優勝に届かなかったのが、原監督の退任した一昨年のこと。それから、また2年の月日が流れています。ベテランが活躍できないわけではありませんが、原時代のイメージで起用することはできません。現有戦力の再編成と再配置、そして、3年後、5年後の黄金時代をイメージした若手の起用が必要になるでしょう。

 

数年前には、巨人、阪神、中日という日本3大都市を拠点とするチームがセ・リーグの覇を競いました。しかし、ドラゴンズがまず再建期に入り、続いてタイガースが若手への切り替えで苦しんでいるところです。そして、ジャイアンツだけがまだ当時の主力に頼りながら戦っています。

 

勝利と育成の両立を求められるのが巨人軍の宿命」かもしれませんが、簡単なことではありません。タイガース、ドラゴンズもジャイアンツに準ずる資金力を持つチームですが、若返りのためにはBクラス転落が避けられませんでした。両立といっても、勝利軸足を置けば育成がおざなりになるのは当然です。育成に軸足を置きながら、可能な範囲で勝利を求める。そして、最悪の場合はBクラスに転落しても構わないという勇気が必要なのではないでしょうか。

 

現在のジャイアンツには、高橋チルドレン、高橋カラーがいまひとつ見られません。それらを明確に打ち出した上で優勝を逃す分には未来がありますが、それをしないまま優勝も逃したとなると一年無駄に過ごしたと言われても仕方ありません。原監督が作った巨大な船に乗ったまま、「小さな船より古い船の方が安全だ」と言って少しずつ沈んで行っているようにも見えてしまいます。

 

こんな順位予想はイヤだ

金をかけたチームが有利なのは金融アナリストにも分かる

プロ野球解説者の順位予想を聞いていて、一番気になるのが「選手層が厚い」と言ってジャイアンツ、タイガースなどの資金力に優れたチームを安易に上位に推すことです。

 

もちろん、長いシーズンを戦い抜くにはレギュラー以外にも優秀な選手がいた方が有利なのは分かります。しかし、一度に試合に出られる選手の数は決まっているので、よい選手が大勢いても足し算で戦力が増えるわけではありません。一方、選手層が薄くても不動のレギュラーで戦い抜くチームもあるわけです。

 

野球に限らずどんなプロスポーツでも、資金力のあるチームほど優秀な選手を集めて強いチームを作りやすいのは当然です。したがって、無作為に並べるくらいなら資金力の順に並べて順位を予想した方が的中率はアップします。

 

たとえば、野球を一度も見たことが無い砂漠の国の大金持ちでも、そのやり方を使えば、それなりの順位予想はできてしまうわけです。しかし、それは金融アナリストのやり方です。

 

「資金力の順には並ばない理由」を見つけ出すのが、専門家である野球評論家の腕の見せ所ではないでしょうか。

 

データ分析から時代のトレンドを学ぶべし

また、現役時代の経験やことわざのような球界の言い伝えに頼り過ぎている解説者も見られます。野球は年を追うごとに進化しており、戦術や常識も塗り変わっていっています。

 

そして、近年はセイバー・メトリックスなどビッグデータを用いた解析を戦力編成に生かす球団が増えてきています。『マネーボール』で有名になったように、メジャーリーグではデータ解析が特に重視されており、野球経験の乏しいデータ分析の専門家が重用されることも増えてきています。もちろん、『マネーボール』にも批判があり万能ではありません。野球経験者の眼力も大切ですが、かと言ってデータ分析を無視してよいという意味にはなりません。客観的なデータを野球の経験的知見とすり合わせて、新しい野球観を生み出すことが必要だということです。

 

優勝チームの新常識

「古い常識に囚われない門外漢の方が野球をよく分かる」と言っては不遜に過ぎると思います。とはいえ、最近のプロ野球を見ていると昔からの格言が通用しなくなっているように感じることがよくあります。

 

そこで、最近の優勝チームの例から、昔とは違う新しいプロ野球の常識ではないかと思う点をいくつかあげていきます。

 

4番より2番打者が重要

2番打者の重要性が非常に高くなっています。そして、得点力重視のトレンドの中で「2番はバント」という常識は崩壊し、打率、出塁率がより求められているようです。

 

昨季のカープの場合、キクマルを2番3番に固定して、そこから逆算して残りの打順を決めているようでした。そして、4番は相手投手や調子をみて入れ替えていました。

 

4番から逆算して打順を決めるチームもまだあるかもしれませんが、「2番3番が固定できれば4番は不動でなくても大丈夫」という考え方も出てきたように思います。

 

先発は3本柱で十分

これも、昨季のカープです。一年間ローテーションを守ったのは、ジョンソン、野村、黒田の3人だけ。残りはいろんな投手が入れ替わり立ち替わりで、「マエケンの穴」を埋めました。

 

かつては、4本柱、5本柱と先発に優秀な投手をずらっと並べることが優勝の条件と考えられていましたが、必ずしもそうではないようです。

 

リリーフ陣がしっかりしていれば、先発は「5~6回を3点以内」で合格点なので、若手の投手の中から調子のいい選手を抜擢すればどうにかなるのかもしれません。

 

セットアッパーは新外国人で埋まる

外国人には当たり外れがあります。日本野球のレベルが上がったこととメジャーリーグのチーム数が増えたことで、日本に来る選手のレベルは相対的に下がっていることも外れが多い原因になります。

 

一方、日本球団のスカウト能力は向上しており、「絶対的な実力には難があるものの、日本野球に適性があり、チームの補強ポイントにぴったり合う選手」を探し当てる精度は上がってきているようにも思います。

 

つまり、エースや4番の仕事を期待できる選手はいないものの限定的な仕事をきっちりこなせる選手なら獲得可能ということです。

 

ちょうどいいのがセットアッパーです。新顔なら打者も対応しにくいし、変則ならなお難しい。誤解を恐れずに言うなら「1イニングならごまかしがきく」わけです。『マネーボール』のビリー・ビーンは「リリーフ投手に金はかけない。どんどんトレードに出して、入れ替える」という方針だったそうです。中継ぎ投手を軽視するわけではありませんが、そういうやり方も無くはないのでしょう。

 

一昨季のスワローズは、外国人投手3人で勝利の方程式を構築し、予想を裏切って優勝を果たしました。「リリーフ投手に不安がある」は、新外国人で劇的に改善する可能性があると考えてよいのではないでしょうか。他のポジションはそうはいきません。