汽水域 Ki-sui-iki

ローカルとオルタナティブ 浸透し混じり合うところに生まれる生態系

太陽光で小さく始めるオフグリッド。green power drinks「エネルギーのつくりかた、つかいかた」

greenz.jp経済産業省資源エネルギー庁の共催イベント、green power drinks「エネルギーのつくりかた、つかいかた」が東京表参道のcommune246でありました。

greenz.jp編集長・鈴木菜央さんを司会に、ともに太陽光発電を使ったオフグリッドに取り組む鈴木俊太郎さん、小沢陽祐さんをゲストに迎えてトークセッションが行われました。

また、自然エネルギーだけで料理や飲料を提供するキッチンカー「みどり号」も登場しました。

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資源エネルギー庁が中心となって「日本をグリーンの力でうごかそう。」というコンセプトのもと、再生可能エネルギーを推進していくグリーンパワープロジェクト。そのグリーンパワープロジェクトとgreenz.jpの共催で行われるgreen drinksの拡張版がgreen power drinks。

 

鈴木俊太郎さん(写真左)は、神奈川県相模原市を拠点に自然エネルギーでの電力供給を手がける藤野電力の生みの親。独立型ミニ太陽光発電システムの組立ワークショップでも有名です。

 

はじめに太陽光発電に手を伸ばしたのは、十数年前、当時使っていたVWのキャンピングカーのバッテリーがすぐ上がってしまうのを何とかしたかったからだとか。ソーラーパネルで自動車のバッテリーに給電する仕組みを作ったのを皮切りに自宅のエネルギーも太陽光に切り替えていきました。

 

東日本大震災のときは自宅周辺に大規模な停電があり、職場から自宅までの間、真っ暗闇。しかし、太陽光発電の自宅だけは煌々と灯りがともっていたのだそうです。そのときの経験をもとに、太陽光発電の普及を目指す藤野電力を立ち上げました。

 

「はじめてのお客さんには、楽しさ、楽しむことを伝えるようにしています。エネルギーは目に見えないけど、毎日使うもの。自分で電気を作ると、電気の使い方を楽しむことができるようになります。」と鈴木さんは言います。

 

小澤陽祐さん(写真右)は、フェアトレードのオーガニック豆を自家焙煎したコーヒー店、スローコーヒーの設立者。2016年からは藤野電力の協力のもと、焙煎機の電力を太陽光に切り替えました。

 

きっかけは、やはり東日本大震災。焙煎機のある会社が計画停電の対象に。実際に停電になったのは1回だけでしたが、計画停電の通知があると当日まで焙煎機を使えるか分からず、営業ができないことがしばしばあったそうです。

使えて当たり前と思っていた社会インフラのあまりの脆さに打ちのめされた気持ちのときに見つけたのが、「原発抜きの電気で映画をつくりたい」というスタジオ・ジブリの広告。

そのときに「ソーラー焙煎」を思いついたそうです。

 

焙煎機の熱源にはガスを使っていますが、動力として400Wの電力を必要とします。これを会社屋上に設置した8枚のソーラーパネルでまかなっています。

 

「電気のつくり方でコーヒーの味は変わらないかもしれないけど、この“バイブス”が伝わってほしい。」

  

鈴木俊太郎さんプロデュースのキッチンカー「みどり号」もお披露目されました。

72Wのソーラーパネルを3枚、屋根に装備。発電した電気を車内のバッテリーに蓄えます。この電気を使って調理をします。他にも、照明を灯けたり音楽を鳴らしたり、という用途が推奨されています。

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バッテリーをフル充電するには3日間かかりますが、1800Whの電気がたまります。ちょっと分かりにくい数字ですが、300Wの電力を6時間使える計算です。冷蔵庫の消費電力が150~600Wと言われていますから、大物家電をたくさん繋いで家のようにくつろぐのは無理ですが、ドライヤー以外ならいろんな電化製品を使えそうです。

 

この日は、レコードプレイヤーとスピーカーを繋いで音楽を奏でてくれていました。

 

なお、太陽光発電の電力を使うと、音楽の音質がよくなると言われています。これは決して「宗教」の類いでは無く、送電、変電の際に発生するノイズの問題。特にコンセントから給電される交流の電気を電子機器で用いる直流の電気に変換する際には大きなノイズが乗ります。それに対して、太陽光自家発電では発電からすべて直流の電気を使うのでノイズを抑えることができます。実際に、音に敏感ではない人でも「クリアさ」の違いが分かります。

 

最後に鈴木菜央さんの言葉。

 

再生可能エネルギーとか電力買取制度とか言うと、おじさんたちの話題だと思うかもしれないけど、小さくても、個人でもできて、身近に感じることができます。ソーラーパネルの電力で電球が点くのを見て、初めて電灯を見たみたいに驚き喜ぶ人をたくさん見ています。難しく考えずに、感覚的に楽しんで欲しいです。」