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汽水域 Ki-sui-iki

ローカルとオルタナティブ 浸透し混じり合うところに生まれる生態系

『希望のレール』 若桜鉄道社長 山田和昭さんトークイベント

石破大臣も応援に

10月3日、神保町の書泉グランデで、若桜鉄道社長・山田和昭さんのトークイベントがありました。著書『希望のレール 若桜鉄道の「地域活性化装置」への挑戦』の出版記念のイベントです。ゲストはローカルジャーナリストの田中照美さん。田中さんも『ローカル鉄道という希望 新しい地域再生、はじまる』が出版されたところです。

 

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元地方創生大臣の石破茂さんが応援に駆けつけるというサプライズもありました。大の鉄道ファンという石破議員。あちこちのマニアックな趣味の集いで見かける印象があります。今回は、山田さんは鳥取県、田中さんは島根県と山陰地方を拠点に活動しているということで、鳥取県選出の石破議員ともゆかりがあり、応援に駆けつけたとのことでした。

 

 

撮り鉄をマネタイズする

山田さんは、長らくIT企業でマーケティングに携わった後、公募で社長に就任しました。「異色の経歴」と言われますが、最近はこういう「異色」がよくあります。ただ、本当に異色なのは、IT企業を辞めたあと、ローカル鉄道専門のコンサルタントとして活動していた時期があるということ。本人のお話では、「いつ社長の公募が出てもいいように修行をしていた」とのことでした。

 

山田さんは、沿線の住民を巻き込んで、鉄道と地域を活性化するためさまざまな施策を行いますが、中でも興味深かったのは、「鉄道撮影スポットの指定席化」です。SLを走らせるイベントがあった際に、平行する国道の橋など鉄道撮影に適した場所を指定席として販売しました。つまり、「撮り鉄のマネタイズ」。撮り鉄は撮影マナーを巡って鉄道会社や沿線住民とのトラブルが多く伝えられているだけでなく、自動車や高速バスで移動し鉄道に乗らないので鉄道会社の儲けにもなりません。そうした問題を一挙に解決するのがこの施策です。撮影スポットを指定席にすることで、撮影を巡るさまざまなトラブルを未然に防ぐとともに、鉄道会社の収益にもなります。

 

地元の人は鉄道に乗らない

全国の事例から分かったもっとも基本的で大事な事実は、「地元の人は鉄道に乗らない」ということです。ローカル鉄道は老人や通学生など交通弱者には欠かせない足ですが、周辺地域はひとり一台自動車を持っている車社会でほとんどの人は鉄道を利用しません。何かイベントがあって、初めて鉄道に乗ったという地元の人も多くいるそうです。

 

こういった人たちをどうやって巻き込んで行くか、ということがローカル鉄道を存続させるためには必要になります。

 

そもそも、車社会の地域で鉄道を残す必要があるのか?という疑問もあるでしょう。

しかし、経済合理性を重視して鉄道を廃止した結果、地域がさらに衰退するということもあります。つまり、デフレ・スパイラルに似た負の循環に陥るわけです。

 

山田さんのお話の中でも「鉄道は宗教に似ている」という言葉がありました。鉄道には地域のシンボル、ランドマークとしての役割、外部の人を呼び込む役割などが期待できます。これらを増幅させて、地域活性化のてことしての鉄道を利用する。こうした役割は、バスではなかなか難しい。

 

「必要不可欠な移動の手段」として鉄道を必要としているが、大きく減っていく社会の中で鉄道もその役割の変化を意識する必要があるように思います。おそらく、運賃収入だけでなく、鉄道と人や地域が接するところににぎわいを生むこと、その中に鉄道会社のビジネスを発見していく、ということがこれからのローカル鉄道の姿になっていくように思います。地域のハブ(結点)としての駅、地域を結ぶ線として線路、それらが地域の活性化のためにどのように使うことができるのか考えていく必要があるのではないでしょうか。